お見合い夫婦のかりそめ婚姻遊戯~敏腕弁護士は愛しい妻を離さない~
「でも、佐奈さんとの結婚を回避したいからって、私と契約結婚までする?」
拓海も佐奈さんも、結婚はできないって意志を、両家に向けて示すだけではダメだったんだろうか。
「それは……」
まだまだ言いにくいことがあるのか、拓海がまた口ごもった。
「拓海?」
私が催促すると、渋々と言った感じで口を開く。
「そうでもしないと、夏美のことを手に入れられないと思ったからだよ!」
「えっ、私? って、え!?」
急になにを言い出すんだろう。
「俺は、大学のときから夏美のことが好きだったんだよ」
「えっ? えー!?」
びっくりして声を上げる私を見て、拓海が「うるさい」と顔をしかめる。
「そういうとこだよ。全然気づいてなかっただろ」
「うん……、普通に友だちだと思ってた」
あ、それじゃ、とふいに思い出す。
「ひょっとして、好きな子からは恋愛対象として見てもらえないって言ってたのって……」
「もちろん、夏美のことだよ」
あれって、私のことだったの? 驚きと嬉しさでカッと顔が熱くなる。
「……私、てっきり佐奈さんのことだと思ってた」
「どうしてそうなるんだよ……」
そう言って、拓海は頭を抱えている。拓海が言うには、そうやって言葉の端々に私への好意を滲ませてきた、つもりらしい。
……でも恋愛に疎い私が、そんな駆け引きめいたことに気がつくわけがないじゃない。