お見合い夫婦のかりそめ婚姻遊戯~敏腕弁護士は愛しい妻を離さない~
六月の花嫁は幸せになる

「いけない! 起きて拓海。もうこんな時間」

 確かに聞いた記憶のあるアラームを、寝ぼけて消してしまったらしい。起きる予定の時刻を、もう30分も過ぎている。

 それもこれも、拓海がいけないのだ。もう無理だ、お願いだからもう止めてと何度も請う私を執拗に責めたてては、昨夜もずいぶん遅くまで楽しんでいた。

 お互いの気持ちを確かめ合って、指輪の交換をやり直して数日。

 どんなに遅い時間に帰ってきても、拓海は必ずといっていいほど私を抱く。

「長い間片想いしていた子とようやく心も結ばれたんだよ。(たが)が外れて当たり前じゃないか」

 当然の権利のように拓海は主張するけれど、私は断固として異議を申し立てたい。

 こうなる前から、拓海はスキンシップが激しかった。拓海と触れ合うことに、綾さん曰く『経験値が低い』私も徐々に慣らされていたという自覚はある。

「もうっ、いい加減起きなさいよっ」

 焦る私に気づかず、すやすやと寝息を立てる拓海が恨めしい。

「もう知らないっ!!」

 ベッドから抜け出そうとすると、横から伸びてきた腕が私を羽交い締めにした。

「なによ、狸寝入りじゃない」

「だって、必死になってる夏美が可愛くって」


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