お見合い夫婦のかりそめ婚姻遊戯~敏腕弁護士は愛しい妻を離さない~

 拓海のこういうところ、本当に(たち)が悪い。

 なんとかしてベッドの中から抜け出そうとする私に構わず、拓海はパジャマの裾をめくり、おへそのあたりにキスを仕掛けてくる。

「ふざけてないで、早く離して。遅刻しちゃう」

「大丈夫だよ。今日は土曜日。俺も休み」

「えっ、そうだっけ?」

 枕の横に放っていたスマホを見る。拓海の言う通りだった。

「だから、まだ起きなくていい」

 口元に色気を滲ませて、拓海が言う。起きたばかりだと言うのに、彼の瞳はもう新たな情欲を滲ませている。

「嘘でしょ。昨日の今日で無理だからね、私」

「家のことなら俺がやるから、夏美はずっと寝ててもいいよ。いっそ今日一日、ベッドの中で過ごしたっていい」

 そんなこと、冗談じゃない。平日は働いている分、週末にやっておきたいことは山ほどあるし、なにより週末くらいゆっくり体を休めたい。

「ちょっ、拓海。ダメだって……」

 ここ数日の間にすっかり私の弱いところを把握してしまった拓海が、容赦なく私を責めてくる。

 こうなるともう、反抗する気力も失せてしまって。結局私は、その日一日ベッドから出ることを許されなかった。


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