お見合い夫婦のかりそめ婚姻遊戯~敏腕弁護士は愛しい妻を離さない~
「ところで夏美さ、今日俺が榊社長になんて言われてここに来たか、わかる?」
普通に食事と会話を楽しんでいて忘れていたけれど、そういえば拓海との会食はおじさまに仕組まれたものだった。そうなるとおそらく、答えは一つ。
「お見合い」
「だよね……」
おじさまのことだ。きっと無理やり拓海のことを言いくるめて、今日ここに来させたに違いない。
「巻き込んじゃってごめんね。おじさまには、私からちゃんと言っておくから」
「言っておくって、なにを?」
「だって、断れなくて無理して来てくれたんじゃないの?」
それどころか、迷惑だったんじゃないんだろうか。拓海レベルの人なら、お見合いなんてしなくてもきっと引く手あまただろう。彼女だっているかもしれないのに。
「夏美、俺が今日ここに来たのは、自分の意志だよ。榊社長からの話をきちんと受けて、夏美とお見合いをしに来たんだ」
「へっ?」
この人は、いったいなにを言っているの?
混乱する私を見て、拓海はくつくつ笑う。この状況に困るどころか、楽しんでいるのがわかる。
拓海は笑うのをやめ、まるで悪だくみを思いついた子どもみたいに、心底楽しくてたまらないって顔をして、言った。
「ねえ夏美、よかったら俺と結婚しないか」
拓海のから突然のプロポーズに、私は今度こそ言葉を失った。