お見合い夫婦のかりそめ婚姻遊戯~敏腕弁護士は愛しい妻を離さない~


「……夏美、大丈夫?」

「大丈夫、じゃない全然」


 あの後冷たいお水をもらって、一息に飲んで、深呼吸を繰り返して、そして今に至る。

 偶然の再会を入れて、拓海と会うのは今日で3回目。たしかに、そこそこ仲のよい友人同士だったとは思うけれど……。

 なぜ拓海ほどの人が、私なんかに結婚を申し込む必要があるの!?


「夏美は榊社長にめちゃくちゃお見合いを勧められてるでしょ。あれは、なんで?」

「ああ、それはね……」

 なぜおじさまが、私の結婚に超絶前向きで熱心にお見合いを勧めてくるのか、そのわけを拓海に話してきかせた。


「それは……ありがたいけれど、やっかいだな」

「そう、そうなのよ!」

 苦笑まじりの拓海に、つい食いつき気味に返してしまう。


「でも、夏美には忘れられない人がいるんだよな?」


 おじさまったら、そんなことまで拓海に話してたのか。

「実はそれは、お見合いをかわすための嘘でした」なんて、今さらなんだか言い出しにくい。


「……夏美の気持ち、よくわかるよ。だって俺も、似たようなものだから」

「そ、そうなの?」

「ああ」

 伏し目がちに、拓海が言う。私のは嘘だけれど、拓海には本当に忘れられない人がいるってこと?


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