お見合い夫婦のかりそめ婚姻遊戯~敏腕弁護士は愛しい妻を離さない~
「拓海なら、どんな子だって簡単に落とせそうなのに……」
「買いかぶりすぎだよ。俺さ、自分が好きな人からは全く恋愛対象として見られないんだよな」
拓海に想いを寄せられてまったく気づかないなんて。そんな人がこの世に存在するなんて驚きだ。
「俺もアメリカから戻って早々、意に沿わない結婚をさせられそうで困ってるんだ。古い知り合いのことを、おまえの許嫁だなんて言い出して。こんなことで今さら親の言いなりになりたくはないんだ」
おじさまの行動も、私のためを思ってのことだって、ちゃんとわかっている。でも自分のことなのに、自分の意志が全く尊重されていないってことに反発したくなるんだよ……。
「そこで、だ。周囲があまりにもうるさいから、俺は先手を打って結婚することにした。どうだ夏美、困ってる者同士で契約結婚をしないか?」
「契約結婚って、漫画なんかでよく見るあれ?」
「……そんな漫画があるのか?」
アメリカ帰りのせいか、それとも弁護士先生は元から漫画なんて読まないのか。勉強熱心な拓海も、世間の流行には疎いらしい。私の返しに、目を丸くしている。
「いやいいの、忘れて。続けて」
一度咳払いすると、拓海はまた話し始めた。