お見合い夫婦のかりそめ婚姻遊戯~敏腕弁護士は愛しい妻を離さない~
「榊社長には、俺が夏美の忘れられない人だったってことにすれば辻褄も合う。どう?」
「……完璧」
さすが弁護士さまだ。私が無計画に放った嘘くさい言い訳まで綺麗に回収している。
「だろ」
満足そうな顔でそう答えると、拓海は自信満々なようすで笑う。
「でもね……」
結婚って言ったら、人生の一大事だ。そんな大事なことを、理不尽なお見合い攻撃から逃れるためとはいえ、本当にこんなに簡単に決めてしまっていいの?
「……俺じゃ不足か?」
「とんでもない! そんなことはない、けど……」
「けど?」
やっぱり、今すぐ決めるなんて、絶対にムリだ!
「ごめん、さすがに即答はできない。しばらく考えさせて」
予想外のプロポーズへの返事は、次回に持ち越しとなった。