お見合い夫婦のかりそめ婚姻遊戯~敏腕弁護士は愛しい妻を離さない~
「もうさ、悩むのやめてスパッと結婚したら?」
「そんな綾さん、他人事だと思って」
いつかできればいいや、ぐらいにしか考えていなかった結婚が、急に現実となって目の前に迫って来たのだ。そう簡単に決められるはずがない。
「そうやってうだうだ悩んでるのが答えのような気もするけどね」
ジョッキをぐいぐいあおりながら、サバサバとした口調で綾さんが言う。
「どういう意味ですか?」
「本当にその気がないなら、プロポーズされて速攻で断ってるってこと。心のどこかでOKしてもいいって気持ちがあるから、迷ってるんじゃないの?」
「そんなこと……」
「あるでしょ。数々のお見合いだって、あれだけばっさり断ってきたのに」
言われてみれば、そうなのかもしれない。本当にNOならば、プロポーズされたその場で断ればよかったのだ。
……なぜ私は、そうしなかったのだろう。