お見合い夫婦のかりそめ婚姻遊戯~敏腕弁護士は愛しい妻を離さない~
高層ビルが立ち並ぶ都心から30分ほど車を走らせたころ、見覚えのある街並みに気がついた。
「拓海、ここって……」
「懐かしいだろ? 近くに車を停めよう」
空いていたコインパーキングに車を停め、外に出た。ここは、学生時代に私と拓海が過ごした街だ。
「懐かしいな。少し歩いてみるか」
「……うん」
幹線道路を挟んで向こう側に、大学の敷地にそって続く銀杏並木が見える。毎日あの道を通って、学校へ通った。
「私は駅から自転車で通ってたんだよね。夏なんて汗だくだし、冬は寒いしで大変だった。たしか拓海は……」
「悪いな。生意気にも車で通ってた」
そういえば、急な土砂降りで途方に暮れていたとき、何度か車で駅まで送ってもらったことがある。あのときも、学生なのに自分の車を持ってるなんてって驚いたんだった。
銀杏並木が途切れ、踏切を渡ると駅前の通りに出る。
「駅まで行ってみる?」
「うん、行きたい!」
懐かしさが込み上げて、二人ともつい早足になった。