お見合い夫婦のかりそめ婚姻遊戯~敏腕弁護士は愛しい妻を離さない~
「わ、あのファミレスまだある!」
「あーよくみんなで行ったな、ここ」
「テスト勉強したよね」
「結局しゃべってばっかりだったけどな」
駅前にあるファミレスはうちのサークルの子たちの御用達で、立ち寄ればいつも誰か顔見知りがいた。つい話し込んでしまって、ドリンクバーだけで遅くまで粘っていた。
「商店街の方にも行ってみていい?」
「ああ、もちろん」
駅前から少し歩くと、大きな商店街がある。次の講義まで時間が空いたときには、時間つぶしにここらへんをぶらついたりもした。
「あー、あそこのわらび餅美味しいんだよね。帰りに買って帰ろうかな」
「そういや夏美って、和菓子好きだったよな」
「なんで知ってるの!?」
「角屋の羊羹がいかに素晴らしいか、みんなの前で熱弁ふるったことがあっただろ」
そういえばそんなこともあったような気もする。あるとしたら、たぶんサークルの飲み会のときだ。
「昔から広く親しまれているものには、長く愛されるだけの理由があるのよ」
「その『清家理論』も、たしか昔聞かされたよ。夏美って、ホントそういうとこ変わらないよな」