お見合い夫婦のかりそめ婚姻遊戯~敏腕弁護士は愛しい妻を離さない~
「そういうとこって?」
「好きなものには惜しみなく愛情を注いで、周りにもその魅力を全力で伝えようとするところだよ」
どうせ昔から、一人で空回りしてばっかりだったよ!
「バカにしてるでしょ?」
「違うな。これでも一応褒めてるんだよ」
「一応って、一言余計よ!」
ムキになって言い返すと、拓海が我慢ができないというふうに大笑いする。
そうそう、こういうノリだった。地頭がいいから、拓海と話していると言葉のキャッチボールが弾んで気持ちがいいのだ。
「拓海は、よく角の古本屋にいたよね」
「好きなんだよ、古い紙の匂いとか手触りとか。あそこで本買って、隣の喫茶店でコーヒー飲みながら読むのがいい息抜きだったんだよな」
「渋い」
「そこは夏美も負けてないだろ」
一つ思い出せば、次々と懐かしい記憶が溢れ出てくる。こうして振り返ると、私と拓海って、本当によく一緒にいたんだな。