お見合い夫婦のかりそめ婚姻遊戯~敏腕弁護士は愛しい妻を離さない~
「夏美に言われて、俺も目が覚めたんだよ。あのときの自分は足りないものだらけだった。だからアメリカに行っている間は、死ぬ気で勉強した。自分の経験にプラスになると思って、どんなことにも貪欲に向かっていった。弁護士として、恥ずかしくない自分になるために。俺が向こうで頑張れたのは、夏美のおかげだ」
「……私が、拓海の力に?」
「そうだよ。だから今こうして、俺は胸を張って夏美の前にいられるんだ」
考えもしなかった。私の言葉が、拓海の励みになっていただなんて。
「あのときはごめんな。そしてありがとう、夏美」
「ううん、私の方こそごめんなさい」
5年ものときを経てようやく謝ることができて、私は心からホッとしていた。でもそれは、私だけじゃなかったようだ。
「あー、やっと言えた。すっきりした」
そう言って破顔した拓海の顔がなぜかとても眩しく見えて。私の中で、長い間止まっていたなにかが動き出したような気がして、内心私は、焦っていた。