お見合い夫婦のかりそめ婚姻遊戯~敏腕弁護士は愛しい妻を離さない~
「拓海さんは、以前から人の役に立つ人間になりたいって言っていました。アメリカに行くのも、たくさんの知識を身につけて資格を取るためだって。そうして仕事の幅が広がることによって、もっと多くの人の役に立つことができるって考えたんだと思います」
祖父江家の全員が、私の話に口を挟むことなく耳を傾けている。自分の気持ちを上手く説明できるか、正直に言って自信はない。
でもこれから拓海の妻として彼の隣に立つのなら、私自身周囲を納得させるだけの言葉を持たなくてはいけないような気がした。
「なりたい自分になるため、彼は一生懸命だったと聞いています。だからどうか、彼のこれまでの努力を否定するようなことは言わないであげてください」
そんなに強い口調で言ったつもりはない。でも、拓海をはじめ誰も何も話さない。やらかした? と思ったときだった。
「これは驚いた。こんなふうに庇ってくれるなんて、びっくりするくらい愛されとるじゃないか、なあ拓海」
それまで黙って話を聞いていたお父さまが、ふいに声を上げた。
「……そうですね。僕も彼女の愛情の深さに感激しています」
まんざらでもなさそうな顔で、拓海もお父さまに答えている。
えっ、私が? いつそんなことを言った!?