お見合い夫婦のかりそめ婚姻遊戯~敏腕弁護士は愛しい妻を離さない~
「ごめんなさいね、夏美さん。あなたはちゃんと納得して、拓海を送り出して、待っていてくれたのよね。拓海、あなたにはもったいないくらいの女性だわ。これ以上夏美さんをお待たせしてはダメよ。一刻も早くお式を……、いえ、せめて籍だけでも入れましょう!」
「そうだな。そうするべきだよ」
湊人さんまで、そんなことを言い出すなんて!
「二人の結婚式なんだが、ちょっと事情があってね。できれば少し先にしてほしいんだ。拓海と夏美さんは、それでも構わないかい?」
「僕は別に構いませんよ。その方が、準備に時間をかけられていいかもしれませんね。な、夏美」
「そ、そうですね……」
もう式の話まで始まってる!? ちょっと待って。いったいなにがどうなってるの?
「そういえば俺、婚姻届持ってます」
「えっ、なんで?」
役所に取りに行ったとか、言ってたっけ?
「榊物産に行ったとき、あの秘書さんからもらったんだよ。チャンスを逃すなって」
「綾さんが?」
まさか綾さんまで、そんなにノリノリだったとは。
婚姻届を見せてもらうと、保証人の欄にはちゃっかりおじさまのサインが入っていた。間違いなく榊の印も押してある。さすが綾さんだ、抜かりない。