お見合い夫婦のかりそめ婚姻遊戯~敏腕弁護士は愛しい妻を離さない~

 出来上がった指輪は、拓海と二人で取りに行った。

 帰りに食事をして、うちまで送ってもらう。拓海にも上がってもらって、早速指輪の入った箱を開封した。


「夏美、手を出して」

「……はい」

 拓海に左手を取られ、にわかに緊張する。自分の部屋で拓海と向かい合うだけでこんなに緊張するのに、実際にチャペル指輪の交換をするとなったら、緊張のあまり逃げ出したくなるかもしれない。

 胸のドキドキを感じながら、薬指を滑る真新しいリングを見守った。


「夏美、俺にも嵌めて」

「あ、うん」

 拓海に見つめられ、今度は違う意味で心臓が跳ねる。たまにだけれど、拓海が私を見る目が、熱っぽく甘く感じるときがあるのだ。

 これは契約結婚で、指輪も形だけのものなのに、錯覚してしまいそうになる。


 私も、拓海に習い彼の左手を取った。関節に引っ掛けたりしないように、おそるおそる指輪を嵌める。指輪が拓海の薬指の付け根のところに収まると、ホッと息を吐いた。


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