お見合い夫婦のかりそめ婚姻遊戯~敏腕弁護士は愛しい妻を離さない~
「そのときは、また新しいの買ってやるから。……それに指輪をしてなくて、夏美に変な虫がついたら困るだろ?」
「なっ、なに言ってんの」
真顔で言われ、こちらが赤面してしまう。
『好きな人ができたらすぐにわかれる』なんて言っていたくせに、もしも私に変な虫がついたら、拓海は困るの……?
「安心してよ、そんなことにはならないから。今までだって、モテたことなんてないし」
「……ダメだ」
低い声でそう言うと、拓海は私の手を自分の方に引き寄せた。顔を寄せ、マリッジリングにキスをする。
その光景が、本当に愛を誓っているように見えて、私は急に胸がいっぱいになった。拓海から目が離せなくなり、心臓が早鐘を打つ。
「約束だ。絶対に外すな」
「はい……」
魔法でもかけられたのだろうか。なぜだか私は、拓海の言葉に逆らう気はすっかり失せてしまい、どんなときもマリッジリングを嵌めて過ごすようになった。