お見合い夫婦のかりそめ婚姻遊戯~敏腕弁護士は愛しい妻を離さない~

 実は常駐の顧問弁護士として週に三日、それぞれ一日ずつ違う企業に赴いているらしい。

 よほど拓海は、企業からの信頼も厚いのだろう。比較的受け持ちに余裕のある他の弁護士と常駐を代わりたいと申し出ても、なかなか企業側からOKをもらえないらしい。

 「嬉しいことなんだけどね」なんて言って、拓海は疲れた顔で笑ってみせる。

 常駐の仕事を減らせないおかげで、他の案件は基本残りの二日と、顧問弁護士の仕事が終わって事務所に帰ってからこなすことになる。

 必然的に帰りは遅くなるし、週末も出勤せざるをえないというわけだ。


「拓海、夕飯は」

「事務所で兄貴たちと食べてきた」

 外食することも多いようだけど、忙しいときは、デリバリーのピザや中華ですますこともあるらしい。男性が多い職場なので、栄養がどうとかより、とりあえずお腹が膨れればいいのかもしれない。

「それなら洗濯物は? そろそろ溜まってるんじゃないの」

「ああ大丈夫。スーツやシャツなんかは全部クリーニングに出してるし、下着くらい自分でやるから」

 この通り、私の出る幕はない。


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