お見合い夫婦のかりそめ婚姻遊戯~敏腕弁護士は愛しい妻を離さない~
とっくに好きになってたんだ
いつも社内を歩き回っている私にしては珍しく、デスクにかじりついて必死に事務仕事をしていると、スマホに綾さんからのメッセージが届いた。
『新婚生活の報告はまだぁ?』
要するに、飲みのお誘いだ。
綾さんなりに遠慮していたのだろう。結婚してから誘われるのは、今日が初めてだ。
『私はいつでもOKですよ』
そう返事を打とうとして、手を止めた。
もう私は、気楽な一人暮らしじゃない。行ってもいいか、拓海にお伺いを立てた方がいいんじゃないのかな。
綾さんへの返事はいったん保留にして、昼食を終えてから拓海に電話をかけた。
『わかった、楽しんできて』
「え、いいの?」
『もちろん。だって堂上さんでしょ?』
こんなにあっさりOKをもらえるものなんだ。まあ、もともとお互いの都合のための結婚だし、拓海も私のプライベートにまで踏み込む気もないのだろう。
『帰りは俺が迎えに行くから』
「え、いいよ。拓海疲れてるでしょ?」
『いや、俺もちょうど出かける用事があるんだよ。それがすんだらすぐ行くから、どこで飲むのかちゃんと連絡しろよ』