彼は私の絵師なので!〜好きだから、渡さない〜
穏やかな休日の午後。とあるマンションの防音室には音楽が鳴り響いていた。たくさん機材の置かれた部屋で、二人の女の子がマイクの前で歌っている。


おはようのオーディションして
弱虫な自分に勝って
金曜日は頑張らなくちゃ
だって二日会えないからね


金曜日のおはようを歌い終えた後、二人は同時に息を吐いてマイクの前から離れる。二人は歌い手という活動をしている。どちらも人気のある歌い手だ。

「紗英!じゃなくて、ショコラ!MIXの方お願いね」

歌い手ミントこと西野樹里(にしのじゅり)は、歌い手ショコラこと谷村紗英(たにむらさえ)に笑いかける。二人は同じ大学に通っていて、仲のいい友達だ。

「はいはい。というか、あんたもそろそろMIXくらい覚えなさいよ」

「しょ、しょうがないじゃん!機械音痴なんだし……」

樹里と紗英がそんなことを話していると、「お疲れ様。三曲も録音して大変だったでしょ?」とアッサムティーが差し出される。樹里たちに可愛らしい顔立ちの男性がニコリと笑いかけていた。
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