彼は私の絵師なので!〜好きだから、渡さない〜
樹里は知らなかった。樹里の後ろを歩く零が寂しげな顔をしていたことをーーー。



秘密基地に集まって
「楽しいね」って単純な
あの頃を思い出して
話をしよう


樹里は一時間ほど歌い続けている。その歌を零はしっかりと聴いてくれていた。零が聴いてくれるということは、樹里にとって何万人に歌を聴いてもらえることより嬉しいのだ。

「いつか、好きって気持ちも歌にできたらいいのに……」

そんなことを樹里は呟く。すると、零が部屋に入ってきて「そろそろお昼にしようか」と笑う。確かにもう十二時を過ぎていた。

「時間経つの早い!!」

「だよね〜」

二人は笑い合いながらリビングに戻り、昼食を作ることにした。

「チキンラーメンしかないけど、いいかな?」

零が申し訳なさそうに言う。樹里は「チキンラーメン大好き!やった〜!」と笑った。零は「よかった」と微笑んだ後、樹里に「そうだ!これあげる」と言い何かを手渡した。
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