彼は私の絵師なので!〜好きだから、渡さない〜
樹里が渡されたのは、ひまわりの花束を抱き締めた樹里が描かれたアクキーだった。しかし、ライブを樹里と紗英が開いた時に販売されたものではない。

「もしかしてこれって……」

「うん。僕の手作り。……ダメだった?」

心配げに零が訊ねる。樹里は首を横に振り、手作りのアクキーを見つめた。世界にたった一つしかないものだ。樹里は嬉しさでいっぱいになる。

「忙しいのに作ってくれてありがとう!とっても嬉しい!!」

樹里はかばんに早速つけ、ニコニコ笑う。零も「またいつでも作るよ」と笑っていた。その時、呼び鈴が鳴り響く。

「あれ?誰だろう。ちょっと見てくるね」

「わかった」

零が玄関に向かい、樹里はかばんにつけたアクキーをジッと見つめる。好きな人に作ってもらったというだけで顔がにやけてしまった。

「えっ!?どうして君が……!!や、やめて!!」

玄関から零の声がリビングに響き、樹里はパッと顔を上げる。零の悲鳴に似た声に慌てて玄関に走ると、樹里は驚いて言葉を失ってしまった。
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