彼は私の絵師なので!〜好きだから、渡さない〜
「零く〜ん!遊びに来ちゃったぁ」

リボンやレースのついたワンピースを着た心愛が零に抱きついている。零が心愛に住所を教えるはずがない。樹里が「どうやって家を……」と呟くと、「愛のチ・カ・ラ」と心愛は笑った。

「零くんって絵師してるんでしょ?だったら私の絵も描いてよぉ〜。私もレイナって名前で歌い手やってるしぃ〜」

呆然とする樹里と零を気にすることなく、心愛はスマホを取り出して自分の歌ってみたを流す。お願いダーリンが流れてきたが、樹里と零は苦笑いするしかなかった。

動画は可愛らしく作られているものの、肝心の歌声が音を何度も外したり余計な加工を加えられたりしている。はっきり言うと下手だ。

それでも、心愛は次々に自分の歌ってみたを流していった。どうやら自分が歌が下手なことに気付いていないらしい。

メルト、サンドリヨン、ロミオとシンデレラ、妄想感傷代償連盟など、たくさんの歌ってみたを聞かされたが、上手なものは一つもなかった。
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