彼は私の絵師なので!〜好きだから、渡さない〜
「そこの歌い手より上手でしょぉ?」

心愛は樹里を指差し、頬を赤く染めながら零を見つめる。零は返答に困っているようだった。

「照れてるのね!可愛い〜!!」

次の瞬間、樹里の目の前で見たくないものが見えてしまった。

心愛が無理やり零の頬を包んでキスをした。そして傷ついた表情を見せる樹里に心愛は勝ち誇ったような笑みを見せる。

樹里の目の前が真っ暗になった。



それから、樹里の記憶はない。気が付けば樹里は家に帰っていて、あのことが夢だったのではと一瞬思ってしまった。

しかし、自分のかばんにつけられたアクキーを見て現実なのだと嫌でも思い知らされる。失恋したかのように、樹里の目から涙が止まらなかった。

そして、その日から樹里は気まずくなって零を避けるようになってしまった。動画のイラストの依頼も、全てラインでのやり取りでしかしていない。零の声を聴くのが怖かったのだ。

「あんたねえ、いつまでそうやってしてるつもりよ」
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