彼は私の絵師なので!〜好きだから、渡さない〜
大学で昼食を食べている時、紗英がため息をつきながら言う。しかし、樹里は「だって……」としか言えなかった。

「人を好きになったの、初めてだから。どうしたらいいかわかんなくて……」

零は何度も樹里に話しかけようとしてくれている。しかし、そのたびに樹里が零に背を向けるか、心愛が零に抱きついて邪魔をするかのどちらかなのだ。

「ほら、これ聴いて!!」

紗英にイヤホンを手渡され、樹里は恐る恐るそれを耳に差し込む。流れてきたのは感情泥棒だった。


嫌われることを恐れるより
信じた愛を伝えたい


「きちんと自分の想いと向き合いな!逃げてばっかじゃ恋は叶わないし、心愛に零は取られちゃう。……それでもあんたは笑っていられる?」

「……ッ!そ、そんなのダメ!!」

零が誰かのものになるなど、樹里にとって耐えられないことだ。零は樹里の絵師であり、好きな人なのだから……。

「零、心愛に連れられてカフェテラスにいると思うよ。ちゃんと言ってきな」
< 14 / 18 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop