彼は私の絵師なので!〜好きだから、渡さない〜
紗英にそう言われ、樹里は真剣な顔で走り出す。カフェテラスまでの道のりがいつもより遠く感じた。

初めての恋に戸惑い、零へのこの気持ちが怖くて樹里は逃げていた。「いつか」想いを伝えたい。そう思っていたが、その「いつか」を樹里は自分から遠ざけていたのだ。

「もう当たって砕けろだよね!!」

持ち前の明るさを引き出し、樹里はカフェテラスのドアを開ける。多くの生徒がカフェテラスでのんびり休憩をしていた。その中によく知った背中を見つける。

「零!!」

ドキドキしながら樹里は叫ぶ。心愛と昼食を食べている途中だった零はゆっくりと樹里の方を向いてくれた。カフェテラスはざわつき、視線が樹里と零に集まる。

「西野さん、何しに来たのぉ?私と零くんのこと邪魔しないでくれる?」

心愛が嫌そうな顔で樹里を睨む。樹里は心愛のことは無視し、零に近づいた。

「……今まで、気持ちから逃げていてごめん!ちゃんと今から伝えるから」
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