彼は私の絵師なので!〜好きだから、渡さない〜
「ありがとう、零……」

樹里はお礼を言い、零からアッサムティーを受け取る。樹里の胸がキュンと音を立てた。

「とりあえず、最初に投稿するのは音偽バナシでその次にお嬢様と執事の冒険だよね?音偽バナシの動画の二人のイラスト描いて送るよ」

零は樹里たちの絵師をしている。素敵な零のイラストに毎回樹里は心を動かされているのだ。

「どんな絵にしようかな〜」

そう言い笑う零を見て、樹里の頬が赤く染まる。樹里は歌い手と絵師という関係が始まった頃から零に恋をしているのだ。しかし、それを口や態度に表すことができない。

「樹里、せっかく零を呼んだんだからもうちょっと話しなよ」

頬を真っ赤にするだけの樹里の服の袖を紗英が引っ張る。樹里は小声で「無理!!」と言った。零に少し話しかけるだけでドキドキしてしまうからだ。

零は可愛らしい顔立ちのため、大学の女の子からの人気もある。休日をこうして過ごせるなんて奇跡だ。しかし、樹里はアプローチの一つもすることができない。
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