彼は私の絵師なので!〜好きだから、渡さない〜
「零く〜ん!さっき教授に褒められてたよねぇ?すごいなぁ」

作った甘い声に樹里は吐き気を催す。樹里にぶつかったその相手は樹里に謝ることなく、零に迫っていた。

リボンやレースがたくさん使われたピンクのロリータを着た女性の名前は滝川心愛(たきがわここあ)。ぶりっ子で人の彼氏をすぐに奪っては捨てる悪女のため、女子からは嫌われているが顔が可愛いためか男子にはモテている。

「た、滝川さん……ちょっと近いかな?」

心愛は零にまるで満員電車の中にいるようなほど近づき、上目遣いで零を見つめている。零の顔は誰が見ても困っているものだ。樹里は教科書を拾い、立ち上がる。

「滝川さん、零が困ってるよ。離れて!」

零にこうしてアプローチできる心愛を少し羨ましいと思いながら樹里は零と心愛の間に割り込む。心愛は目を涙で潤ませ始めた。

「ひどい!私、零くんと仲良くなりたいだけなのに……」

泣き出しそうな心愛を見て、零がますます困ったような顔を見せる。その時、紗英が言った。
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