彼は私の絵師なので!〜好きだから、渡さない〜


半径85センチが この手の届く距離
今から振り回しますので 離れていてください


好きなボカロを口ずさみ、樹里は零に対するドキドキを誤魔化そうとした。



そして日曜日。樹里は零の家に行くため、身支度を整えていた。

「よし!メイクも終わり!!」

耳に星をモチーフにしたピアスをつけ、樹里は微笑む。髪は低めのお団子ヘアにし、ショートパンツに白いシャツ、サマーニットカーディガンというナチュラルなコーデにした。

「滝川さんみたいなあんな格好はできないしな。でも、男子ってあんな格好の女の子の方が好きなのかな?」

鏡の前で悶々と樹里は悩む。ファッション誌を見れば見るほど自分の格好に自信がなくなってきた。しかし、もう家を出なければならない時間だ。

「行ってきま〜す……」

樹里は高鳴る胸を押さえつつ、教えてもらった零の家まで歩く。樹里の家から零の家までは歩いて二十分ほどのところだった。
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