俺の彼女は魔法使い
「お、大判焼き……食べない?」


歩きながら彼女が俺にそう言うので、俺は引いていた彼女の手を離した

その瞬間に少しホッとした表情をする彼女を見て、何だか悲しくなる

そんな事には全く気がつかない彼女は、笑顔で「はい」と大判焼きを渡してくる

「粒あんだよね」と言いながら、次は自分のものに手を出している


「そういえば、楠木は何選んだの?」

「わぁたしぃ?かしゅたーど」


すでに大判焼きをほお張っている彼女は、何を言っているのかちょっと聞きとりにくい

ほお張っていた分を飲み込むと、彼女は「ごめん、ごめん。カスタード」と言い直した

そんな彼女は、これまで見たことないような笑顔で、再び大判焼きに向かっている

まるで子供じゃないか

本当にその童顔通りの笑顔には、まいってしまう


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