好きなんだから仕方ない。
ダメだ。出来るわけがない。そのせいで専属から外され、そばにいられなくなったらと思うと体が強張って動けない。手を伸ばせば届く距離にいるのに触れられないなんて。でも、他の奴にそばにいられるよりは触れられない方が。
泣き疲れて眠ってしまったエイミア様を布団に寝かせ、持ってきた物を回収して部屋を出た。
寝付けず、一人になりたくなくて俺を頼ってきてくれたのは嬉しい限りだ。でも、所詮執事として。彼女が異性として頼ってきてくれる事はない。今までもこれからもずっと。

「あ、クロエラさん。先日はどうも」

「あぁ、どうも」

この女中は確か、長男の所にいた。親密な関係だと噂になっているがよく王族に手を出せるな。それがまだ他国の者なら良いかもしれないが自分が専属として仕えているお方など。
いや、あまり嫌ってはいけないな。羨ましく思わない訳じゃないのだから。
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