好きなんだから仕方ない。
互いに軽く頭を下げ、台所を出て自室に戻った。もう朝日も上っているから確りと眠れはしないが、仮眠くらいは取らないと体ももたないだろう。
いっそのこと、愛していると言ってしまおうか。あの女中のように立場に囚われず言ってしまえば楽になるだろうか。
いや、そんな事出来るわけがない。もし断られたらどうする。毎日嫌というほど顔を合わせ、部屋を出る時など必ず付き添わなければならないのに彼女に気まずい思いをさせるつもりか。でも、愛していると言って彼女の本音も聞けたならもう悩まなくて済むのも事実なんだよな。
自分一人じゃ何度やっても諦めきれなかった。本当に他の人の気持ちに答えようかとも思ったが好きになれなかった。俺は彼女じゃなければ愛せなくなってしまったんだ。
彼女の耳に入らないようにと召し使いたちに問われても否定してきた。それだけでも直せばまた少し違うだろうか。認めるようにすれば少しは楽になるだろうか。
ダメだ、ダメだ。何を弱気になっている。相手は王族。叶わないと知っていて諦められなかったのは俺だろう。周りを巻き込んでどうする。落ち着け。今までだって出来たじゃないか。いつも通りにしていれば大丈夫だ。
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