皇太子は神の子に首ったけ〜異世界に転移してしまいました!?〜
──そう。
日本では当たり前の黒い髪に黒い瞳。
それはこの国では異様なものだった。
この国では、茶色やシルバーの髪が一般的で、瞳は青や緑といった色が多かった。
唯一違うのは王族だけであるとされていて、王族はブロンドの髪に紫色の瞳をしていた。
だから、モルガネとイレーヌ以外の使用人たちは私を怖がり、目を合わせようともしなかった。
「…はじめまして。ナナ・アルベルト・ドゥヴォスと申します。ダニエル・アルベルト・ドゥヴォス様の養女として迎えていただきました。以後、お見知りおきを。」
そう言って、いわゆる“淑女の礼”と言うやつをする。
私が言語の先生に最初に教えてもらったのは自己紹介だった。
お義父様との関係を図で表して理解させ、実際に発音をしてもらいそれを真似する。
マナーについては、私が会話ができるようになってからにするらしいが。挨拶をするときの礼だけはしっかりと叩き込まれた。
名前も、“新木”と名乗ることを禁じられてしまい、ドゥヴォスの名を名乗らなければならなかった。
何より、言いにくいのだ。
その他にも、お義父様と呼ばなければいけないし、使用人たちに敬称をつけてはいけないなど、細かく言われた。