皇太子は神の子に首ったけ〜異世界に転移してしまいました!?〜
この辺りには民家などはなく、田や畑ばかりが広がっている。
川か境界線のようになっていて、橋を渡ると公園や民家、コンビニがあった。
橋さえ無事に渡ることができれば、叫べば誰かしらが助けに来てくれる。
そう思い、走り出そうと足に力を込めた。
「きゃっ…!」
後ろから腕を引っ張られる感覚がし、倒れそうになるのを何とかこらえた。
そして、恐る恐ると私の腕をつかんだ人を振り返り見る。
そこにいた人に、目を見開いた。
「あ、あなたはたしか…。」
「久しぶりだね──奈々ちゃん?」
にこりと笑ってそういった彼に、寒気がした。
──3日前、私は彼に告白された。
私には彼氏がいる。
幼馴染でもあるくろと、約3年前の中学2年生のときから付き合っているのだ。
だから、もちろん告白はお断りさせていただいた。
彼氏がいることも伝えたし、彼氏がいるなら仕方ない、と確かにそう言っていたのに…。
しかも、あろうことか私は彼の名前を知らない。
告白されたとき、名乗らなかったのだ。
知っていることといえば、3年生の先輩である、ということだけ。