皇太子は神の子に首ったけ〜異世界に転移してしまいました!?〜
デビュタント
「はい、できましたよ。」
その言葉にそっと目を開く。
「わぁ、すごいわ!化けるものねぇ…。ありがとね、モルガネ!イレーヌ!」
──今日がとうとう来てしまった。
私の初の社交界──いわゆるデビュタント。
この屋敷を出たことすらない私は、当たり前のように緊張していた。
でも、新調したドレスを身に纏い、いつもはしないメイクをしてもらうと気分が上がった。
…我ながら単純だとは思う。
「本当に別人みたい!ありがとう。」
ふたりに向かって微笑むと、それに返してくれた。
ほっこりとした時間を過ごしていると、ドアがノックされた。
返事をするとすぐに扉が空いた。
「ナナ、入るぞ。」
「──はい、どうぞ。」
正直、もう入ってるじゃんって思ったけど、そんな言葉は飲み込む。
──入ってきたのはお義父様だった。
「準備はできたのか?」
「はい、お義父様。たった今終えたところでございます。」
「そうか…。今日は決してドゥヴォス家の恥になるような行動は慎むように。」
「はい、分かっております。」