皇太子は神の子に首ったけ〜異世界に転移してしまいました!?〜
──あいつ、絶対私のこと好きとか嘘じゃん!!
好きな人を川へ突き落とすなんてありえないし、溺れてるのを見捨てるとか論外なんですけどっ!?
そんなことを思っている間にも、服はどんどん水を吸ってしまい、鉛のように重い。
背負ったままのリュックに入っている教科書も重い。
私は水面に顔を出せなくなってしまっていた。
あがりたいという意思とは裏腹に、暗い水の中へと沈んでいく。
──あれ、川ってこんなに深かったっけ…?
少しの違和感を覚えた。
でも、意識はだんだんと遠くなる。
そんな中で私は悟ったのだ。
──あぁ、私、死ぬんだ。
パパ、ママ、私のほうが早く死んじゃってごめんね…。
京汰、こんな馬鹿なお姉ちゃんでごめんね…。
くろ…ずっと一緒にいるって約束したのに、守れなくてごめんね…。
家族や、くろとの思い出が蘇る。
これが走馬灯か…なんて、どこか他人事のように、冷静に見ている自分がいた。
「だい、す、き…」
水の中で、わたしは声にならない言葉を発した。
そのせいで、肺に残っていた僅かな空気をも使い果たした。
私はそのまま意識を手放した。