ヘタレな俺はウブなアラサー美女を落としたい


 年齢はよくわからなかった。これだけ落ち着いてて俺より年下ということはないだろうが……二十代だよな? 自信がない。人間離れした美しさを前に、自分の持っている基準があまりアテにならないような気がして。

 優しい手に揺すられながら、俺はすぐにでもシャンとして、このお姉さんに御礼が言いたかった。格好をつけるには遅すぎるけど、もう一秒もこんな醜態を見られたくない。

 時間が巻き戻ったりしないかな。出会うところからやり直せたなら、俺はもう少しモテメンらしく振る舞って、この人とワンチャンそういう関係に……ないか。想像することすらおこがましい気がしてきた。すみません……。


「聞こえてる? ほらっ」
「うっ……!」


 少し強引に腕を引っ張られ、上体を起こされた。体同士が近づいたことでふわっと香りを感じる。

 お姉さんのほうからほんのり香ってきたこの匂いは……なんだろう。ちょっとスモーキーだ。だけど煙草とは違う。もっと芳醇な、甘く柔らかい香り。

 ただ、二日酔いでハイパーグロッキー状態に陥っている今、これ以上香りを分析する余裕はない。俺は慌てて手で自分の口を塞いだ。
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