君の秘密


「遠慮しないで」


 香織さんは笑顔でそう言ってくれた。


「そうよ、遠慮しないで」


 来未さんも笑顔でそう言ってくれた。


 私は、どうしようか迷ったけど……。


「……じゃあ、お言葉に甘えてご一緒させて頂きます」


 せっかくの香織さんと来未さんのお誘い、私はお言葉に甘えさせてもらった。


「じゃあ、決まり」


 香織さんと来未さんは笑顔でそう言った。


 私は、お母さんに【友達とご飯を食べてから帰るね】とメッセージを送っておいた。
 お母さんからは【楽しんでおいで】と返信がきた。


「ほら、大翔、いつまで拗ねてるの。早く行くわよ」


 香織さんの呼びかけで、市野瀬くんはしぶしぶ私たちの方を向いて一緒に歩き出した。


 私は、歩き出してすぐに思ったことがあった。

 そういえば市野瀬くんは、私も一緒にご飯を食べることになったことを知っているのだろうか。
 私が香織さんや来未さんに一緒にご飯を食べようと誘われているとき、市野瀬くんは私たちに背を向けていたから、ひょっとしたら私も一緒にお供させてもらうということは知らないかもしれない。

 一言、市野瀬くんに言っておいた方がいいのかもしれない。

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