君の秘密


 確かにそういうおっかないところがある市野瀬くん。

 でも私は、市野瀬くんは根っからの悪ではないような気がして。

 そう思う根拠は特にない。
 ただ直感でそう思うだけ。

 だけどクラスの女子たちは、すっかり市野瀬くんのことをまるで悪魔のような見方をしている。

 それとは反対に男子たちからは意外にも好評。

 まぁ、好評というよりは、市野瀬くんのことが怖いから、ただご機嫌とりをしているだけなのかもしれないけど。


 どちらにしても、私は隣の席が市野瀬くんでも他の男子でも特に気持の変化はない。

 だから。


「そんなことないよ。私は全然嫌とかではないから」


 私が市野瀬くんと隣の席になったことを気の毒だと言った彩乃に私はそう言った。


「ほんと杏樹は度胸があるよね。というよりただ鈍いだけ? 杏樹のそういうおっとりというか、ぽわんとしたところというか、すごく羨ましい」


「そう?」


「そうだよ。なんか怖いもの知らずというか」


「そうかな」


「そうだよ、そうだよ」


 彩乃は、よく私のことをおっとりとしているとか、ぽわんとしているとか言う。
 自分では、おっとりとしているとか、ぽわんとしているとか、そういうことはわからない。

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