君の秘密


 私が今まで見てきた、市野瀬くん。

 それが。

 崩れていく。

 市野瀬くんのイメージが。

 いい意味で。

 市野瀬くんのイメージが崩れていく。

 でも。

 きっと。

 違うんだ。

 本当は。

 本当の市野瀬くんは。

 純粋で素直で優しい男の子。

 私は嬉しかった。

 やっぱり市野瀬くんは。

 根っからの悪ではなかった。

 可愛らしい部分も優しい部分もたくさん持っている。

 良い部分をたくさん持っている市野瀬くんのことをはっきりと知ることができて、私は本当に嬉しかった。



「杏樹ちゃん」


 ……‼


 香織さんに名前を呼ばれて、私は我に返った。


「デザート食べる?」


 気付いたら、私もみんなもご飯を食べ終えていた。


「私はね、パフェ食べたいんだ」


 笑顔で香織さんは言う。


「なんだよ、食いしん坊」


 さっきまでテーブルにおでこをつけたまま下を向いていた市野瀬くんは、話せるだけの元気を取り戻していた。


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