君の秘密


 こういうときは一体どう話に入っていけばいいのか、私はわからないまま、ただ黙ってみんなの話を聞いているしかなかった。



 結局、どう話に入ればいいのかわからないまま帰る時間がきた。



 店を出た、私たち。


「じゃあね、杏樹ちゃん、またお話ししようね」


 香織さんが笑顔でそう言ってくれた。


「はい、またお話しましょう」


 私も笑顔でそう言った。


 笑顔で私のことを見ていた香織さんは、視線を私から市野瀬くんの方に向けた。

 そして。


「大翔、杏樹ちゃんのこと送ってあげなさい」


 香織さんが市野瀬くんにそう言った。


「あっ、大丈夫です。私はここで失礼します」


 市野瀬くんに送ってもらうなんて申し訳なくて、私は香織さんにそう言った。


「いいのよ、杏樹ちゃん、遠慮しなくて。どうせ大翔はこれくらいしか役に立たないんだから」


 私が遠慮しないように、香織さんは私にそう言ってくれた。


「あぁっ⁉ なんだそれ」


 市野瀬くんは鋭い目つきで見ながら香織さんにそう言った。


 こういうとき市野瀬くんと香織さんにどう言えばいいのか、私はわからなかった。


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