君の秘密


 市野瀬くんが突然声をかけてきたから、私はびっくりして声が出なかった。


「誰にも言うなよ」


 え……?


「今日のこと」


 私は、まだ声が出なくて何も返事ができないでいるところに市野瀬くんは話を続ける。


「今日、姉貴たちがオレのことをいろいろ言ってたけど、そのことを誰にも言うなよ」


 私は「うん」と返事をしようとしたけど、まだ声が出なかった。


「おい‼ 聞いてるのか⁉」


 何も返事をしない私に市野瀬くんは少し強めの口調でそう言った。


 声が出ない。仕方がないから、私は無言で首だけを縦に振ろうかと思ったそのとき。


 あ……。

 私は、あることを思いついた。

 これを実行すれば。

 実行すればなんだけど。

 今までこんなことはしたことがない。

 なんか卑怯な気がして。

 でも。

 今、これをしなければ。

 そうしなければ、市野瀬くんとはクラスメートのままで終わってしまう。

 永遠に市野瀬くんとは仲良くできない。

 そう思った私は、まずは市野瀬くんにわかられないように小さめに深呼吸をした。

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