君の秘密

　私が市野瀬くんに声をかけたら、私と一緒にいる彩乃が『え～、市野瀬くんに声をかけちゃったのぉ～』というような表情で私のことを見た。


　そして市野瀬くんの反応は……。


「…………」


　市野瀬くんは無言のまま鋭い目つきで私の方を見た。


　市野瀬くんの表情を見た彩乃は、市野瀬くんの表情に恐れを感じたのか、そのまま固まった状態になっていた。


　私はというと……市野瀬くんの表情にそれほど恐れを感じていなかった。


　きっと私のそういうところが彩乃からすれば『度胸がある』とか『怖いもの知らず』とかなのかな。


　私は市野瀬くんの鋭い目つきを特に気にすることもなく、市野瀬くんに少し微笑みかけた。


「市野瀬くん、隣の席だね、よろしくね」


　私は市野瀬くんにそう言った。


「…………」


　市野瀬くんは無言のまま鋭い目つきで私のことを見ていたけど、そのまま私から目を逸らして正面を向いた。


　市野瀬くんの様子を見ていた彩乃が私の肩を軽くポンポンとした。