君の秘密


 私がいろいろな生き物たちを見て「かわいい」と言ってはしゃいでいるときも市野瀬くんは無反応だった。
 それも市野瀬くんらしいと思った。



 いろいろなところをまわって水族館を出た、私と市野瀬くん。


 昼ごはんも食べ終えて、今、私と市野瀬くんは水族館の近くの港に来ている。


 そこから見える海。

 それはとても美しい。

 そして青く果てしなく広がる空。

 それを映している海。

 やさしく揺れている波が、青い大きな空を映している海を揺らしている。

 空の色を映した海に太陽の光も加わり、キラキラと宝石が散りばめられたように輝いている。


 そんな青く美しい空を映し、キラキラと輝いている海を静かに見守るように見ている私と市野瀬くん。

 そこに、ほのかに潮の香りを含ませた風が、私と市野瀬くんにやさしく触れる。


 こうして静かに市野瀬くんと過ごす時間。
 それは私にとってとても幸せなこと。

 …………。

 不思議……。
 なぜだろう。
 市野瀬くんは友達。
 他の友達と同じ友達。
 でも。
 他の友達には感じない気持ちが市野瀬くんと一緒にいると……。



「……佐伯」


 ……‼

< 58 / 74 >

この作品をシェア

pagetop