君の秘密


 ひょっとして、あの日、市野瀬くんが『……ただ……』と言いかけた、あの意味深な一言……。
 あの一言。
 あの言葉を聞いたとき、なんだろうと、とても気になっていた。
 その疑問が今、解消された。
 あの一言は、市野瀬くんが本当の気持を言おうとしていたということだったんだ……。


「だけど、勇気がなかった。お前にそれを言う勇気が……」


 市野瀬くん……。


「でも、そんなことでは、いつまでたっても何も変わらない。だから今日、お前にオレの気持ちを伝える覚悟を決めた」


 だから私と『友達をやめたい』って……。


 …………。

 ……あれ……。

 ……なんか。

 ……急に……。

 腹が……。


「……なんで……」


「はぁ?」


「なんで市野瀬くんはそんな言い方しかできないの⁉」


 腹が立ってきた‼


「な……なんだよ急に⁉」


「そんな『友達やめたい』だなんてそんな言い方しなくても素直に私への気持を伝えるだけでいいじゃない‼」

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