君の秘密
「……行くぞ、杏樹」
市野瀬くんは、そう言って私の手を繋いだままゆっくりと歩き出した。
……‼
今……。
今、市野瀬くん、私のこと『杏樹』って……。
私は嬉しくなって繋いでいる手をもっとぎゅっと繋ぎ返した。
「行くって、どこに行くの? 大翔くん」
『大翔くん』
そう呼ぶのは初めてだし、たぶんしばらくは慣れなくて恥ずかしいと思う。
私が『大翔くん』って呼んだとき、大翔くんが少し反応したように見えた。
そして大翔くんは少し照れくさそうに、
「カフェとかでいいだろ」
ぶっきらぼうに言った大翔くん。
「うん」
私は笑顔でそう返事をした。