今夜、あなたに復讐します



「へえー。
 夏菜さん、ついに社長と二人で暮らすんですかー」

 秘書室で上林(かんばやし)が夏菜に言ってくる。

「しゃ、社長の家でじゃないですよ。
 何処かお互いの家の中間地点でですよ」
と言いながら、特に意味のない言い訳だな、と夏菜自身思ってはいた。

「社長はそのお住まい、もう探されたのか?」
とノートパソコンから目を上げ、指月が訊いてくる。

「いえ、さっき決まったばかりの話なので」
と夏菜が言うと、

「どの辺なんですか?」
と上林が興味津々訊いてきた。

 ちょうど有生が社長室からやってきたときだった。

 有生が中間地点と思われる場所を上林に告げると、上林は、
「あ、うちの家なら、その中間地点にありますよ」
と言ってきた。

 有生が言う。

「あってどうしろと言うんだ。
 お前の別居中の奥さんとお子さんが住んでる家だろうが。

 間借りしろと言うのか……」

 いやいや、言ってみただけですよ~と上林は笑っている。
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