今夜、あなたに復讐します
 いや、自宅はわりと二個目の部屋みたいな小洒落た造りなのだが。

 家族はみんな海外を飛び回っていたり、逃亡していたり、道場に(かくま)われていたりして住んでいないので、あそこもなんだかホテルか、ちょっと覗いてみたモデルハウスみたいな感じで、我が家という感じがしないしな、と思う。

「えーと……

 落ち着くのはこっちですかね?」
と夏菜は無垢材で統一された、だだっ広い部屋を選んだ。

「わかった。
 黒木」
と有生が住所を言うと、はい、と黒木が頷く。

「必要最低限の家具や家電はあるようだが、まあ、なにかいるものがあったら買いに行こう」

 有生が買ってくれると言う。

「いっ、いえいえっ。
 あのっ、それでしたら、おじい様からお金を預かっているので」
と夏菜はお金が入っているキャリーバッグのあるトランクを振り返った。

 使うつもりはなかったが、社長に払わせるのも悪いから、とりあえず、あのお金をお借りしよう、と思って言うと、

「別にいい。
 それくらい買ってやる。

 しばらく住むんだから、家具でもなんでもお前の好きな感じに変えていいぞ」
と言われた。

 ……どうしましょう。

 なんだかわくわくして来ましたよ、と思っているうちに、車は、そのマンションに着いていた。
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