今夜、あなたに復讐します
「此処だ」
と最上階のフロアにある玄関扉を有生が開けた。
あまり使っていないせいなのか、まだ木の香りがする。
「お、お邪魔します」
と言いながら、なにもないがらんとした広い玄関に夏菜は入った。
うわ。
これは、このままなにも置かない方がいいような、と夏菜は、すとーんと広く、ただ床も壁も天井も木目だけが見える廊下を見回して思う。
暖かい色のダウンライトに照らし出された陰影の綺麗な廊下を、そそそそ、と爪先立ちで遠慮がちに、有生について歩いた。
有生がリビングのドアを開けてくれると、大きな壁一面あるようなガラス窓から、緑溢れるバルコニーが見えた。
広いリビングには大きな白いソファがひとつ。
続きになっているダイニングには、無垢材のダイニングテーブルと白い椅子。
白い椅子は一見、アイアンっぽいが、これも木だった。
有生はぐるりとリビングを見回し、
「あんまり物がないな。
このままでもいいが、なにか必要なら買い足せ」
と言う。
「私、此処に来るまでは、100均グッズでDIYしてお洒落に飾ってみたいとか思ってたんですけど。
此処に、100均は似合わないですよね~」
そう夏菜は苦笑いした。