今夜、あなたに復讐します
部屋の隅にちょこんと荷物のあまり入っていないキャリーバッグを置いたあと、夏菜は真っ白なソファに腰掛けようとしてやめた。
汚したら申し訳ないなと思ったからだ。
あまりにもモデルハウスな感じなので、自分が住む家という実感がない。
夏菜は迷って、ソファの前に正座した。
有生は、なにやってるんだ、という顔をしていたが。
夏菜がそこに正座しているので、なんとなくなのか、有生も夏菜の前に正座した。
開放感のある大きな窓から燦々と日は降り注ぎ、冬なのに、ちょっと暑い、と思いながら、二人で黙って座っていた。
「なにしたらいいんだろうな?」
と有生が訊いてくる。
普段、仕事人間なので、こういうとき、なにをしていいのかわからないのかもしれないと思う。
きっと休みの日でも、書類でも見てるんだろうな、と夏菜は勝手な想像をする。
だが、そう思う夏菜自身、
いつもなら、軽くみんなで山を走ってる時間なんだが、社長とふたりきりでなにをしたらっ?
と気まずい沈黙に焦っていた。