今夜、あなたに復讐します
よく手入れされた黒い大型のクラシックカーがロータリーに着く。
藤原夏菜はエントランスの白い柱の陰から息を殺し、それを見つめていた。
ビルの中から出てきた若いすっきりしたイケメンが後部座席のドアを開けると、長い脚が覗き、はっきりした顔立ちの長身の男が降りてきた。
年若いのに、すでに人の上に立つ者独特のオーラがある。
この会社の社長、御坂有生だ。
今だっ、とばかりに、夏菜はタッと有生に向かって走り出した。
だが、有生の許にたどり着く前に、驚くような速さで、さっきのイケメンが夏菜を取り押さえる。
「誰ですか? この娘」
と夏菜の腕を後ろにひねり上げたイケメンは、うさんくさげに夏菜を見、有生を見た。
その視線に有生は、
「……昔、もてあそんで捨てた女とかじゃないぞ」
と弁明する。
夏菜はイケメンに取り押さえられながらも、有生に向かって叫んだ。
「あ、貴方に復讐に来ました!」